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N. G. Place

なんと丸い月が出たよ窓

「咳をしても一人」
先日のラジオで聞いたこの一句。
なんとも印象的だった。聞いた事はあるけど、誰の句だったか。

『放哉評伝』/村上譲(春陽堂)
尾崎放哉(明18年1月20日〜大正15年4月9日)。
弧絶の俳人と呼ばれている。





「業」というのはこういうものではないかと思うのである。ことごとく酒が災いして道を踏み外している。帝大を卒業し保険会社に勤めるも37歳の時酒が原因で辞職。その後、京都・一燈園に入るも退園、京都・知恩院称院の寺男となるも酒が原因で辞し、その後も転々と寺を移った後、終焉の地、小豆島に流れ着く。節目ごとにさしのべられる、親類、学生時代の友人、俳人仲間などの尽力や好意もことごとく結ばれない。辛抱強く連れ添った妻とも別れ、ひたすら孤独な生活を望んだ、と思いきや、病を得て死と向き合うようになってから臨終までに各所の俳友たちに出した手紙の数はおびただしいという。
これは私が今でも思い出して泣かされるのでございますが、彼は前申しましたように生まれつき寡黙で、あれだけ自分の思っていることは手紙に書いていながら、さて会って話そうと思うと、自分の思っていることの十分の一も話さないでしまうのでした。私の方でも、もっと話したいと思っていても、彼が余り話さないものですから、いつも物足りない、言い残したという心持ちで帰ってくるのが常でございました。
同書p166

これは放哉の姉・並の回想であるが、なんとも切ない。孤独を望んでいる一方で、激しく人を欲しているように思われる。でも最後まで業に苦しみ自分を持て余した放哉も気の毒だが、この歳になると、それに翻弄された妻・馨に同情してしまう。いや、馨がどう思ったかは、彼女しか知らない。もしかしてひょっとして幸せだったかもしれない。彼女は生前、放哉について語らなかったという。

『尾崎放哉句集』/(春陽堂)
春の山のうしろから焔が出だした 放哉


[参考文献]
『尾崎放哉の詩とその生涯』/大瀬東二(講談社)
『放浪の詩人 尾崎放哉』/瓜生鐵二(新典社)
『放哉』/村尾草樹(層雲社)




by pea19 | 2005-12-11 17:59 | 趣味

N. G.なもの・人・場所を記録しておいて、近寄らないようにしたい。
by pea19

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